地域・在宅看護論概論③

こんにちは。シオン訪問看護ステーションです。 今回3回目の授業報告書は「在宅分野と病院の違い」についての授業が行われました。

まず在宅分野と病院の違いの説明が行われました。
病院は「Cure(キュア)」を中心とした医療が行われる場所です。
Cureとは治療する・矯正する・治す・取り除くという意味があり、病気や異常な状態を医学的にみて「正常な状態」に近づけることを目的としています。
そのため病院では、検査や治療、手術など身体の状態を改善することが優先されます。

在宅分野では、地域のさまざまな場所で病気を抱えながら暮らしている人に対して、
医師や看護師だけでなく、薬剤師、リハビリ職、介護職、福祉サービスなど、
多くの職種・事業所が関わりながら支援が行われています。
病院と大きく異なるのは、一人の利用者様、一つの家族様に対して、複数の専門職や事業所が連携し、生活そのものに深く関わるという点です。

在宅分野で大切にされているのは、
「Cure(治療する・治す)」に加えて
「Care(気にかける・配慮する・寄り添う)」という視点です。
医学的に正しいかどうか、できる・できないという判断だけではなく、
その人にとって何を大切にしたいのか、どう生きたいのかを一緒に考えていく。
在宅分野は、そうした価値観を探し、支えていく場所でもあります。

続いて、在宅分野と病院で働く人たちの関係性について説明がありました。
病院では、医師が治療に対する権限を持ち、治療の方向性を決定します。
その方向性に沿って、各職種が明確に役割分担された形で業務を行います。
こうした関係性は、上下関係や役割の序列がはっきりとした
ヒエラルキーに近い構造になりやすいと説明がありました。

在宅分野では、病院のような上下関係ではなく、
それぞれの専門性を活かしながら支え合う関係性が大切にされています。
状況に応じて中心となる人が変わる「マルチリーダーシップ」で動くことも多く、
誰か一人に責任が集中しにくい
ヘテラルキー的な構造が特徴です。

続いては在宅分野での看護の実践を、実際に関わっている利用者の事例をもとの講義が行われました。
看護の実践の場は、自宅だけではありません。
アパートやマンション、施設、有料老人ホームなど、暮らしの場そのものが看護の現場になります。

今回は施設に入所されている74歳女性の事例が紹介されました。
就業中の事故により頸髄損傷を負い、痙性麻痺を抱えながら生活されています。
その方の暮らしの中に、医療や看護、介護が生活に密着する形で関わっている様子が説明されました。

また、
在宅看護は自宅以外の場所でも、実践されています。
学校や暮らしの保健室、認知症カフェなど人が暮らすさまざま場所がその現場になります。
その一つとして、義務教育機関へ看護師が帯同し医療的ケアを行う現状についても紹介がありました。
胃ろうからの栄養注入や、痰の吸引などの、その子どもに必要な医療処置を学校生活の中で支えています。
医療的ケアを受ける子どもの数は平成29年(2047年)以降増加しており、帯同する看護師の数も増えてきているものの、十分とはいえない状況です。
そのため、保護者が付き添わざるを得ない状況もあります。

在宅看護が必要なのは大人だけではありません。
小さな子どもたちの暮らしの中でも、継続的な医療の支えが求められていることを学ぶ時間となりました。

「在宅」と聞くと高齢者をイメージしがちですが、
実は年齢に関わらず、暮らしの場そのものが看護の現場であることを知る機会となりました。

続いて、講師・山本が参加してきた地域活動についての紹介がありました。

まずは、健康や介護の相談が気軽にできる『まちの保健室』の活動です。
高齢者向け入居施設の前で、地域で育てた野菜の販売や子どもたちによる出店と並び、看護師が健康や介護の相談に応じる場が設けられました。
「ちょっと聞きたいんだけど」と気軽に立ち寄れる、地域に開かれた保健室です。

次に紹介されたのは、堺市で開催されている『堺ぬくもりカフェ』です。
介護施設が主体となり、認知症で悩むご本人やご家族が集い、情報共有ができる場となっています。
そこには看護師も滞在し、悩みを聞きながら、必要な福祉機関やサービスへつなぐ役割を担っています。

また、大阪府柏原市にある安福寺(あんぷくじ)では、地域で家族を介護している方に向けたカフェが毎月開催されています。
介護の困りごとや不安に対して、看護師の立場から意見や知識を伝える取り組みも行われています。

さらに、新型コロナ感染症がパンデミックとなり、医療機関がひっ迫した際には、自宅療養を余儀なくされる人も多くいました。
そのような状況の中、京都市西京区のよしき往診クリニックと大阪の葛西医院の医師らが中心となり、訪問診療チーム「KISA2隊(Kyoto Intensive Area Care Unit for SARS-CoV-2)」を立ち上げました。
看護師や薬剤師など多職種が連携し、自宅で療養する感染者を支える活動が行われました。

これまでの講義から、在宅看護の役割は、健康を守るための予防的支援や健康意識の向上、セルフケア能力を見出し引き出すこと、そして尊厳を守り、意思を尊重した暮らしを支えることであると理解しました。

しかし、暮らしの中で看護を実践するためには、療養者がどのような生活要素の中で生きているのかを知る必要があります。

第一に、マズローの生理的欲求である「食べる・寝る・排泄する」といった、生きていく上で不可欠な活動がどのように営まれているかを見る視点です。
第二に、それらと同様に重要な、人や社会とのつながりの積み重ねを知ることです。
第三に、感情や希望、これまでの人生の歴史や価値観といった、その人固有の個別性を理解することです。

これら三つの要素は十人十色であり、看護師として学んだ知識に療養者を当てはめるのではなく、療養者の生活に看護が伴走するという姿勢が重要であると学びました。

在宅分野では、その人らしい生活や暮らしに根付いた看護が求められます。
感染症などの急性疾患だけでなく、生活習慣病などの慢性疾患、さらには健康を守るための予防にも関わる幅広い分野です。

また、多職種や地域のサービスとつなぐ橋渡し(リエゾン)の役割も、在宅看護の大きな特徴の一つと言えます。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
また次回、お会いしましょう