こんにちは。シオン訪問看護ステーションです。
今回の授業・研修報告書は前回と同じ「地域・在宅看護論概論②」
テーマは「暮らし」です。



第2回の講義では、初回のテーマである「地域を知る」から一歩踏み込み、
「地域ではどのような生活が営まれ、それが健康とどう結びついているのか」という点についてお話をしました。
この結果について、訪問看護に携わる立場としては、この数字を「十分」と捉えるべきなのか、それとも本来受けられるはずのサービスにまだつながっていない人が多いのかーー
正直なところ、解釈の難しさを感じました。
学生には、
「地域で営まれる生活には人それぞれのリズムがあるが、人が生きていくために必ず必要なものは何か」
という問いについて考えてもらいました。
その中で、「お金」「命」「家族」など、さまざまな意見が挙がりました。
確かに、どれも大切な要素です。
しかし講義では、アメリカの心理学者マズローが提唱した**「人間の欲求」**に着目して話が進められました。
マズローの欲求は5段階に分けられていますが、その中でもすべての人に共通する最も基本的な欲求が
**「生理的欲求」**です。
これは「食べる」「寝る」「排泄する」という3つの欲求であり、生活を営むうえで最もベースとなるものとされています。


こうした欲求の考え方を踏まえたうえで、
「人が地域で暮らしていくためには何が必要か」について、あらためて学生に考えてもらいました。
講義では、暮らしを確立する要素を大きく3つに分けて説明しています。
① 毎日の行動の積み重ねと衣・食・住
② 家族の存在や社会とのつながり
③ 暮らしている本人の感情や希望
これらの要素が重なり合うことで、地域の中での暮らしが成り立っている、という視点が示されました。




実際、訪問看護を利用されているお二人にご協力していただき、在宅療養における暮らしを3つの要素に分けて説明が行われました。
続いて、『パン屋さんに行きたい田中さん』という事例を用いて、グループワークを行われました。
講義では、

・地域での暮らしは健康とどのように関連しているのか・WHOが定義する「肉体的、精神的、社会的にも満たされた状態」はすべての人にとっての健康と言えるのか・規則正しい生活は、誰にとっても健康なのか
・地域での暮らしは健康とどのように関連しているのか
・WHOが定義する「肉体的、精神的、社会的にも満たされた状態」はすべての人にとっての健康と言えるのか
・規則正しい生活は、誰にとっても健康なのか
といった視点から、学生とともに考えていきました。


田中さんは呼吸器の疾患があり、24時間酸素吸入を使用しながら在宅で生活しています。昔から大のパン好きで、毎日焼きたてのパンを買いに行くことを楽しみにしていましたが、
次第に息切れが強くなり、医師からは
「できるだけ歩かないほうがいい」と説明を受けます。
この事例に対し、学生からは「ヘルパーさんや家族に買いに行ってもらう」という意見が多く挙がりました。
しかし、その後田中さん自身が
「いつまでも自分で歩きたい」
「自分の食べるものは自分で選びたい」
という希望をもっていることが伝えられると、学生たちは悩み始めました。
医師からはあまり歩かない方がいいと言われている。
一方で、本人は歩きたいと願っている。
この事例を通して、「健康」は一つの形ではなく、個人によってさまざまな意味を持つ、
ということを学生に知ってもらうことが、講義のねらいでした。
一般的に使われる「健康」の視点だけではなく、
**その人らしく過ごすための「健康」**という視点をもつことの大切さが伝えられました。



身体面を最優先に考え、医師の判断どおり歩かない生活を送ることで、田中さんは本当に精神的にも健康でいられるのでしょうか。
病気だけを見るのではなく、療養者本人の希望や願い、これまでの人生や想いを尊重しながら、「この人にとっての健康とは何か」を考えることの重要性が示されました。
健康の価値観は人それぞれ異なります。だからこそ、暮らしと健康の多様性に目を向け、その人の希望を一緒に見出していくことが、寄り添う支援につながるのではないでしょうか。
今日の講義はここまでです。
次回は「地域・在宅看護論概論②」として
・病院と在宅分野の違い・地域・在宅看護の役割についてです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
また次回、お会いしましょう。
